成年後見人と相続

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遺産相続の際、亡くなった方が遺言書を作成していれば、遺産は原則として遺言の通りになるのですが、遺言書が必ずしも作成されているとは限りません。

遺言書が作成されていなかった場合は、遺産分割協議で遺産の行方を決める必要がありますが、その際、相続人の中に認知症や知的障害などで自身の判断能力が低い人がいる場合でも、その人を無視して遺産相続を進めることはできない決まりとなっています。

そこで成年後見制度の利用が必要になる場合があるのです。

成年後見とは、事故や認知症、精神障害などで自らの判断能力が低下した人をサポートするための制度のことで、お世話する人を後見人、お世話される側の人のことを被後見人と呼びます。

この成年後見制度を利用している場合としていない場合では、遺産相続での手続きが大きく変わってきます。

遺産分割協議と成年後見制度

相続人の中に判断能力が低い人がいると、遺産相続の際に必要な遺産分割協議で話し合いをすること自体ができなくなってしまいます。

というのも、自分で正常な判断ができないがために、自分が不利になる条件で遺産分割協議を進められていたとしても理解することができないからです。

遺産分割協議では、すべての相続人が平等に扱われることが原則となっていますので、無理矢理遺産分割協議を進めようとしても、すべて無効になってしまいます。

そこで、遺産分割協議を進めるために必要になるのが成年後見制度です。成年後見制度を利用することによって、後見人が被後見人に代わって遺産分割協議に参加できるようになるのです。

また、遺産分割協議に参加するだけでなく、遺産分割協議書への署名捺印も後見人が行うようになります。

成年後見人の選び方

成年後見人の選任の手続きは家庭裁判所で行います。

成年後見人になるために特別な資格は必要ありませんが、以下の『成年後見人の欠格事由』に当てはまっている人は成年後見人になることができません。

成年後見人の欠格事由

1. 未成年者(婚姻している未成年者は該当しない)
2. 家庭裁判所が解任した法定代理人、保佐人、補助人
3. 破産者
4. 被後見人となる本人に対し訴訟をし、またはした者、その者の配偶者、直系血族
5. 行方の知れない者

また、トラブル防止のために弁護士や司法書士などの専門家を後見人に選ぶことも可能です。

本来は後見人になるべきである親族が、本人と離れて暮らしているため管理ができない状態であっても弁護士や司法書士であればすぐに対応できます。

また、後見人を申し立てるためには書類の作成や資料の収集など面倒な手続きが多いのですが、専門家を後見人に選ぶことでそれらを一任することができるということが大きなメリットです。

成年後見人の終了時期

成年後見人としての責任は、被後見人が死亡するまで続きます。遺産相続という目的を果たしたからと言って終わるものではないのです。

どうしても途中で後見人を辞任したい場合は、家庭裁判所で『成年後見人辞任許可の申立』を行う必要がありますが、正当な事由がなければできませんので注意が必要です。

ただし、選任するのに本人の同意が必要である補助人の場合は、代理権が付与された行為が完了した時点で代理権や同意権を取り消す審判を申し立てることで補助人を終了できることがあります。

これは、日常生活は問題なく行うことができるけれど遺産相続などの重要な法律行為については1人で判断しにくいというケースでよく利用されています。